ストレスは「人生のスパイス」と言われるように、よい刺激ともなり、人が一皮剥けて、成長を遂げるきっかけともなります。ストレスには、ユーストレス(よいストレス)とディストレス(悪いストレス)があるわけです。
ですから、決して悪いことばかりではないとは言いつつも、健康やパフォーマンスに悪影響を及ぼすストレスは、組織のリーダーの方にとっても大敵ですね。
そもそも私たちは日頃、ストレスの要因となる事象や人のことを「ストレス」と言っています。しかし、ストレスの要因は「ストレッサー」と言う方が正確です。とは言え、日常的にはストレッサーもストレッサーによる心身の反応もひっくるめて、ストレスという言葉を用いる方が、浸透しているので、ここでも小うるさいことを言わないでおきます。
では、ストレスを理解する切り口として、2つの分類法ご紹介します。
ストレスの分類 その1
1つ目は
- 物理的ストレス(ストレッサー)
- 科学的ストレス(ストレッサー)
- 生物的ストレス(ストレッサー)
- 心理・社会的ストレス(ストレッサー)
と4つに分類する考え方。
物理的ストレス
これは、温度、騒音、明るさ、設備などがあげられます。例えば、職場が寒い、機械の音が響く、デスク周りが暗い、机やいすが体に合わないなどの場合、物理的なストレスがあるということになります。秋が本格化する今、朝と日中の気温差などもここに入ります。
科学的ストレス
これは、化学物質によるストレスで、例えば、排気ガス、塗料などが当てはまります。自分にとっては、いい匂いのフレグランスや柔軟剤で、目、鼻、喉がおかしくなったり、体調不良にはならないにしても、不快に思う人もいるので、要注意です。体臭もここに入り、スメルハラスメントという新しい言葉も生まれています。
生物的ストレス
代表格としては花粉がありますが、新型コロナウィルスのようなウィルスや、細菌もこのストレスに入ります。働く人の体調悪化やパフォーマンスダウンが顕著に表れるものです。
心理・社会的ストレス
これは、日常的に私たちがストレスと呼ぶものです。人間関係や職務上の責任などを指します。
ストレスの分類 その2
2つ目は、ストレスの衝撃の大きさから
- カタストロフィー
- ライフイベント
- デイリーハッスルズ
と3つに分ける考え方です。
カタストロフィー
大規模な自然災害・天変地異、大事故などにより、多くの人の命が失われ、生活が破壊されるような出来事を指します。東日本大震災に代表されるような大地震、熱海の水害、現在のウクライナやガザ地区のことを思い浮かべていただくとよいでしょう。
ライフイベント
その人の人生における大きな出来事を指します。例えば、家族の死、失業、離婚などのつらい出来事が当てはまります。一方で、結婚、出産、昇進などの喜ばしい出来事がストレスとは理解しづらいかもしれませんが、大きな変化に適応するということになるので、実は案外ストレスがかかっているものなのです。
デイリーハッスルズ
日々のちょっとした出来事のことです。例えば、通勤時間が長い、同僚とウマが合わない、子供が言うことを聞かない、など、細かいストレスですが、複数重なったり、長期間にわたって続いたりすると、かなりつらいものです。
見過ごされるストレスに注意
以上2つの分類のそれぞれをご覧になって、どのように感じられたでしょうか。
働く人のストレスというと、仕事の忙しさや職場の人間関係の問題は、すぐに思い浮かぶと思います。でも、実は、作業環境、季節の変化、ハッピーな変化、小さな出来事の積み重ねも、ストレスなんです。
特に今の時期は、暑いのか寒いのかわからず、寒暖差が心身に響く人が多くいます。職場にストレス要因がなかったとしても、気候の変化も、働く人にとってストレスとなり得ることを意識していただけるとよいでしょう。
こうしたものは、見過ごされがちです。ストレス対処の第一歩は「ストレスへの気づき」ですので、意識してみましょう。
組織のリーダーの心掛け
組織のリーダーには、まず働く人のストレスというものが、案外広範囲にわたっていることを理解していただきたいです。
その上で、もし「ストレスを感じているのではないか」と思われる従業員がいたら、テッパンである声掛けを行ってください。
その時「どう?調子は?」とか「大丈夫?」とアバウトな声掛けをすると答えようがありません。「仕事が変わったばかりだけど、戸惑ってることはない?」と尋ねたり、「肩こりを気にしているようだけど、作業環境の改善点を教えてほしいんだ」と、具体的な声掛けをしてみましょう。
そして、従業員の方のためだけではありません。自分自身にも、このように様々なストレスがあるのだと気づいていただきたいのです。
リーダーは、自分のことより、従業員のこと、組織のこと、業績のことに関心が向きがちです。その関心をしっかり払うために、ご自身のコンディションを、まあまあよい状態で保てるよう気をつけてください。
リーダーこそ、たまにカウンセリングを受けて、自分の点検をしてほしいものです。