感情というなかなか難しい存在
このところ感情について考えを巡らす機会が多いです。
心療内科でのカウンセリングやリワーク、あるいは企業さんの相談室が私の職場。
自分の感情を把握して言葉にするって難しいんだなと感じることが多くあります。
私自身も自分の感情にピッタリ来る表現のボキャブラリーが貧困であることも痛感しています。
感情をもっと理解する
以前「感情リテラシー」について投稿するきっかけとなった「クローズアップ現代」。
何かヒントはないかと、出演されていた法政大学教授の渡辺弥生さんの著書「感情の正体-発達心理学で気持ちをマネジメントするー」(ちくま新書)を手に取りました。
その中に「エモーショナル・アジリティ」なるものが紹介されていました。
この仕事をしているにも関わらず、恥ずかしながら、初めて知ったという概念です。
自分でも驚きました。
アジリティ???
「エモーショナル・アジリティ」は、「感情の敏捷性」と訳されています。
ハーバード大学のスーザン・デイビッドが、感情のマネジメント法として、自分の感情を把握して受け入れ、うまく折り合うためのスキルやコツとして提唱しました。
そこから、いろいろ文献を当たってみました。
アジリティと言えば、我が家の愛犬も、一時期アジリティのお稽古に通っていました。
いろいろな障害物に敏捷に対応して、正確さと速さを競う、犬の陸上競技です。
そもそもアジリティには、そんなイメージしかありませんでした。
そうか人間にも・・・というのが初見の感想でした。
感情に無頓着な日常
忙しい毎日、自分の感情に無頓着になりがちです。
また、ネガティブな感情は抱えていて辛いもの。
平静を装ったり、蓋をして無かったことにしてしまうこともあります。
でもネガティブな感情って、しつこく迫ってきますよね。
ネガティブ感情は、人間なら当たり前
デイビッドは、感情を見ないとか、無かったことにするような振る舞いは、人間の本質に反するとしています。
なぜなら、現実を直視し、リスクを避け、先を見通し、問題を解決するには、ネガティブな感情が役立つからです。
なので、無理に前向きになるのではなく、ネガティブな感情が発生したときに、敏捷に対応することを勧めています。
無理無理ポジティブにしなくていい
敏捷とは言っても、早く切り換えるとか、ポジティブ変換することではありません。
この点で私は、デイビッドの言っていることに、とても好感を持ちました。
私は、ポジティブ心理学の考え方は好きですし、職場のポジティブメンタルヘルスを推奨したいとは思っています。
しかし、ポジティブ心理学が一般的になっている昨今、リフレーミングや、3GoodThingsのような手法ばかりが出回り、それを冷めた目で見ることも増えてきていました。
エモーショナル・アジリティのトレーニング
さて、感情の敏捷性は、犬のアジリティのお稽古と同じで、そのスキルを高めることができるようです。
具体的方法の4つの段階をお伝えします。
- ①感情を受け止める
マイナス感情だとしても、自分の感情をあるがままに感じる。感情の言葉を使って「プレゼンができるかどうか“不安”」「あの人が“妬ましい”」などです。
- ②感情との距離を取る
感情と自分とを切り離す。例えば「私は不安だ」ではなく「私は自分の中の不安に気づいている」、「私は妬んでいる」ではなく「私の中に妬みが湧いていると気づいている」というように、「~~と気づいている」と言い換えてみるとよいです。文字に書き表したり、深呼吸したりもお勧めです。
- ③感情が生じる理由を考える
その感情は、自分のどんな価値観と関連しているのでしょうか?その感情から見えてくる自分の望みは?感情が自分にとって大切な何かを教えてくれます。例えば「人に迷惑を掛けるのはよくない」とか「自分もあの人のように活躍したい」とか。
- ④前に進む
小さな一歩でよいので、3)で見えてきたことを反映した行動に出る。プレゼンが不安なら、先輩にリハーサルをお願いするとか、活躍したいなら、スキルアップのために上司にお勧めの本を教えてもらうとか、ちょっとした前進でOKなんです。
職場づくりにも生産性にも、よい影響が!
デイビッドは、自分の感情に素直になると、職場のコミュニケーションがよくなり、創造性・イノベーションが高まるとも言っています。
感情的になることは職場風土に悪影響があるのでしょう。
感情をあるがまま受け止め、巻き込まれることなく、正直に向き合えば、伝えるべきことや行動すべきことが見つかりそうですよね。
感情のマネジメントは個人への効果だけでなく、よい仕事にも繋がるなんて、なんと素晴らしいことでしょうか。
web上に、TEDの映像を見つけました。
デイビッドの生い立ちについても触れられています。
これを観ると、より理解が深まると思います。
10数分の短い映像ですので、ご覧ください。