名古屋EAPコンサルタント研究会定例会開催
少し前になりますが、先月5月11日(日)、「名古屋EAPコンサルタント研究会」で、とてもよいキャリアの勉強会を開くことができました。
講師に、私、木下芳美が、大学院で非常にお世話になった浦上昌則先生(南山大学名誉教授)をお招きしたのです。
講義のタイトルは、
「『信念』をめぐって-あきらめる,妥協することを考える(考え直す)-」。
「あきらめ」や「妥協」はネガティブ?
浦上先生は、2024年度で南山大学の教授職から早期に退かれました。
私としては、また一人お世話になった先生がいなくなり、非常に心細くなりました。
でも逆に、「暇になる」とのことで、ここは好機!最終講義をもとに、ご講義いただいたわけです。
私たちは、人生を歩む中で、少なくない「あきらめ」や「妥協」を重ねています。
その言葉のニュアンスは、寂しいような、残念なような、少々後ろ向きで、ネガティブな響きを持っているように感じます。
「諦」や「妥」 文字の持つ意味
では、一度、文字の持つ意味を調べてみようと、漢字辞典オンラインで調べてみました。
すると、あきらめの「諦」は、「つまびらか。明らか。明らかにする。まこと。真理。さとり。」
続いて、妥協の「妥」は、「おだやか。やすらか。落ち着いている。安定している。」
と書かれています。
どちらも文字の持つ意味は、決して後ろ向きでネガティブなことではないのですよね。
一般的な使われ方として、本来の意味が変わっていったのかもしれません。
そうなると、あきらめることや妥協することは、悪くないんじゃないかと。
「積極的妥協」という考え方
実際、浦上先生が紹介してくださったChenの「積極的妥協」(2004)。
Chenは、妥協は発達的に有用であり、積極的という言葉によって、妥協を活用するという可能性を示唆しているとのこと。
あきらめや妥協は、何らかの失敗や挫折など、傷付き体験をした後で、主体的に自分が選んで行うことのように思います。
そこに至るプロセスは、自分の傷付きを直視することにもなるので、決して心地よいことではないでしょう。
しかし、そうすることで、自分にとって重要なことが、かえって際立ってくることを、私自身、わりと最近経験しました。
つまり、あきらめたことで、大事なことや優先することが明らかになり、自分にとって優先順位の高いことにエネルギーを投入するため、積極的妥協を活用したと言えるのかなと。
信念が邪魔をする
一方で、自らの信念の中に、「途中であきらめたらダメだ」「妥協したらかっこ悪い」というようなものがあると、あきらめや妥協にネガティブな意味しか見出せないかもしれません。
私は、医療機関でのリワークプログラムに関わっていて、参加者の皆さんと復職後や再就職後のキャリアの再考に取り組んでいますが、ここは、心を配らないといけないポイントと思います。
病気の症状として、思考の柔軟性が低下している中で、あきらめや妥協と結びつく信念が固くなっている可能性もあるからです。
実り多き勉強会
それにしても、今回の研究会は、仕事でのキャリア支援に役立てられるのはもちろんのこと、自分のキャリアについて考える機会ともなりました。
『キャリア教育へのセカンド・オピニオン』という先生の著書にも諦めの重要性について触れられているそうです。
私も未読なので、探してみます。