「感情リテラシー」を知っていますか
少し前のことになりますが、今年の4月、NHKのクローズアップ現代で、こんなことが取り上げられていました。
闇バイトにはまる若者達は、「感情リテラシー」が乏しいという内容です。
「感情リテラシー」という言葉は、聞き慣れない方も多かろうと思いますが、人の感情を適切に捉え、理解・解釈し、ぴったりくる言葉で表現できる能力と言えます。
最近の若者の傾向
番組では、若者達に、自分の感情に気づけない、自分の感情を言葉にできない、あるいは、他人の気持ちをくみ取れないといった現象が起きていると伝えていました。
SNSが便利に使えるようになって、短い言葉でのやりとりが増える中、使い勝手の良い「ヤバイ」という表現が多用されているのも、その現れと言えます。
いやいや若者だけとは言えない
ただし、私は、感情リテラシーの乏しさは、若者に限ったことではないと感じています。
昭和の頃は、「仕事に感情を持ち込むものじゃない」と上司から教えられたという方は多いのではないでしょうか。令和になっても、そういう態度が、かっこいいとか大人のあり方と認識されているかもしれません。
実際、昭和の若者だった管理職の方の中には、「とにかく仕事してくれればよい。部下がどんな気持ちで仕事しているかには関心がない。」とか、「自分の気持ちをわざわざ部下に伝える必要はない。」と言う方もいます。
カウンセリングの現場でも
カウンセリングで認知行動療法を実践するとき、感情(認知行動療法では気分という言い方)と思考を分けて捉え、自分の中で起きていたことを理解するようにしますが、この2つの仕分けは慣れるまで難儀をする方は多いです。
また、アサーティブコミュニケーションのトレーニングの中でも、自分の感情を言葉にすることが苦手な方は本当に多いです。
感情を表現することは感情的なことなのか?
自分の感情を捉え表現することに慣れていないのだと感じます。感情を表現する=(イコール)感情的になることとして、避けている方もいるでしょう。理性的であることがよしとされ、感情を表現したら、子供じみていると認識してしまうこともあるのでしょうね。
感情と思考は異なる者もの
また、感情と思考の区別がついていないケースも散見されます。私が、その区別のアンテナをいつも立てているためもありますが、スポーツ選手のインタビューでも、「感情と思考がごっちゃだなぁ」と気になる表現が高頻度であります。「○○という気持ちです」とか「~~~~と感じました」と話しているけれど、実は思考を表現しているのです。
感情は大切なシグナル
感情というのは、私たちにとって、シグナルとして重要な意味も持っています。私の経験からでしかありませんが、メンタルのコンディションが下がっているにもかかわらず、はじめは身体の不調しか自覚症状がなかったという方は一定数おられ、そういう方々は、あまり感情のことを語られないように思っています。
感情リテラシーが向上すれば
感情リテラシーの向上により、自分や他者の感情への感度が上がり、感情豊かな日々を送れるでしょうし、今は危機だという状況においては、いち早くそれを察知し、手を打つことにも繋がります。つまり、感情リテラシーの向上は、豊かな人間関係を育み、メンタルヘルスの向上にも繋がるという、人間誰しもに求められることなのではないでしょうか。
感情は大切なものです。人間なら当たり前に存在するものです。まずは、そう認識して自分の感情を把握してみませんか?そして、できる限り、自分の感情にピタッとくる表現をするためには、語彙数を増やすことも大事ですよね。
番組で紹介されていた、少年刑務所や学校での取組みも、非常に興味深い内容でした。子供たちが先生の力を借りて、友だち感情を伝える場面は、テレビを観ていたときに感動し、涙がにじむほどでした。
番組のwebページがありますので、ご覧ください。